税の無駄遣い2108億円、検査院が指摘 コロナ対策も点検
会計検査院は5日、国の2020年度決算の検査報告を岸田文雄首相に提出した。税金の無駄遣いや、資産を有効活用できていない状況を指摘したのは210件で、総額約2108億円だった。新型コロナウイルス対策事業を巡る検査では、約22兆円が未執行になっており、政府が調達した布製マスクが大量保管されるなどしていた実態も判明した。
210件の指摘件数は1994年以降で最少で、コロナの感染拡大によって実地検査が制約された影響が出た。指摘金額は前年度の297億円を大幅に上回った。法令に違反する「不当事項」は157件で、計66億円だった。
岸田首相は「多くの指摘、誠に遺憾。しっかり受け止め、行政の信頼回復のために対応させていただく」と述べた。
1件当たりの指摘金額が最も大きかったのは、財務省の使う見込みのない記念貨幣用の金地金保有で約1600億円。指摘件数を省庁別にみると、最多は厚生労働省の59件で、国土交通省の27件が続いた。
検査報告にはコロナ対策で19~20年度に計上された国の予算計約65兆円のうち、3割を超す約22兆円が未執行だったことも盛り込まれた。翌年度への繰越額は約21兆円に上り、検査院は「予算の執行状況を国民に情報提供すべきだ」と各省庁に呼びかけた。
「アベノマスク」と呼ばれた全世帯向けなど、布製マスクは今年3月末時点で約8272万枚(約115億1千万円相当)が倉庫で保管され、昨年8月~今年3月の保管費は約6億円に上ったことも判明した。
接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の不具合を巡る対応では、開発したシステムのテスト体制や事業コストの管理などが不適切だったとして厚労省に改善を求めた。
コロナ以外では、空港事務所の非常用電源設備が十分な耐震性を備えていなかったことや、インターネットで農地情報を検索できる「全国農地ナビ」のデータが未更新だったことなどを指摘した。
実地検査の件数は19年度比3割減の約1100カ所で、当初計画で対象としていた検査件数(約1万1100カ所)の1割にとどまった。2回目の緊急事態宣言が発令された今年1月以降、宣言期間中は実地検査を全て中止していたことが響いた。
自治体の担当者にオンラインで聞き取りをするなどして調査を進めたが、検査院幹部は「実地検査が制約され、21年度決算の調査に向けた『仕込み』作業も滞っている。コロナは長期間にわたり、調査に悪影響を与えそうだ」と話す。
決算検査報告は、内閣から独立した立場から国の財政を監督する会計検査院が、各省庁や、国が資本金の2分の1以上を出資する法人などの決算を検査し、1年間の結果をまとめたもの。毎年秋、首相に提出したうえで公表する。
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