本田が決める-。日本(FIFAランク30位)が今日4日、W杯ブラジル大会出場権を懸け同アジア最終予選でオーストラリア(同47位)と対戦する。引き分け以上で5大会連続のW杯出場が決まる大一番を前に3日、ロシアから帰国したMF本田圭佑(26)が会場の埼玉スタジアムでの公式練習に合流。本田は成田空港に長男を抱いて帰国するビッグサプライズで、自身の喜びを無言で報告。次は代表に、ゴールに迫る姿勢を注入し、ホームで初めてW杯を決める喜びを日本にもたらす。

 本田が導く。ようやく合流したエースが大一番を前に不安を抱える日本を意識改革し、ブラジル切符をもぎ取る。冒頭約15分だけ公開された公式練習では仲間とボール回しなどウオーミングアップを終え、同じくこの日合流したFW岡崎、DF酒井高とランニング。静かに決戦への準備を終えた。取材エリアでは報道陣の問いかけに顔を上げることなく素通り。いつもの本田だった。

 引き分け以上の結果なら、自力で5大会連続W杯出場が決まる。国内での決定となれば史上初。国民的な大一番だ。ただ、本田不在の3月のアジア最終予選ヨルダン戦はまさかの敗戦。1度ブラジル行きの切符をつかみ損ね、続く5月の親善試合ブルガリア戦も完敗。代表を取り巻く状況は決して明るくない。本田もリーグとカップ戦の2冠を制したロシアから、危機感を抱いて合流してきた。

 長男を抱いて帰国し試合前から日本を騒がせた。その約11時間前。本田は単身、モスクワ・ドモジェドボ空港にいた。たくさんの人でごった返す同空港内。これから合流する日本をどう感じているのか、どう変え、どう勝たせるのか-。キーマンは「ブルガリア戦は見たのか?」という質問に静かにうなずく。そして、すっと顔を上げた。黒いサングラスの奥からこちらを見据えるようにし、ひと言だけ発した。

 本田

 サッカーというのは、点を取るためにやるものだから。

 完封負けしたブルガリア戦は横パスやバックパスが多かった。相手を脅かし得点につながるような効果的な攻撃は少なかった。そこを指摘した。欧州に渡りゴールを決めることでのし上がり、代表でもW杯南アフリカ大会で2点を決め、現在の確固たる地位を築いた。「ゴール」の意味と価値をよく知っている。ロシアでひと回り成長し、今季は味方に点を取らせるプレーも増えてきた。取って、取らせて、W杯切符も取る。長距離移動含む「中2日」だが先発が確実。得点へのむき出しの思いを注入し、代表をよみがえらせるつもりだ。

 空港でサプライズ公開した長男のエプロンも本田のジャケットも、日本代表の青色だった。戦いは始まっているといわんばかり。この長男、まだ0歳児だが待ち受けていた報道陣のフラッシュを浴びても一切動じなかった。顔はお母さん似だというが、肝っ玉は早くも父譲りか。本田をよく知る関係者によると両足の力が他の乳児と比べて、かなり強いという。「悪魔の左足」の遺伝子を受け継いでいるようだ。この日は父子2人で主役となった。今日の大一番では父の、エースの威厳を結果で示し、日本に歓喜をもたらす。【八反誠】

 ◆本田の公式サイト(http://keisuke-honda.com/)に「ご報告」と掲載されたメッセージ全文

 「皆さんこんにちは。いきなりなんですがプライベートのことで報告したいことがあります。昨年の秋に元気な男の子が誕生しました。産まれたときはシーズンの途中だったので、リーグが終わってからの報告という形を選びました。子供のメディアへの露出は今回限りで、あくまでも『報告』と認識して頂けたらありがたいです。明日には大事なオーストラリア戦もありますので、これくらいで簡単な報告とさせて頂きます。これからも引き続き日本のサッカーへの応援を宜しくお願い致します。本田圭佑」(原文まま)