家庭で自作、簡単トコジラミ対策

2013.08.14
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布地の上のトコジラミの電子顕微鏡画像。

Image from Eye of Science/Science Source
 テーブルスプーン10杯の砂糖(150グラム)と2杯のイースト(30グラム)を水1.5リットルに混ぜた液体でペーパーカップを満たし、ひっくり返した犬の餌皿の中央の部分に置く。 これだけで、市販品を上回るトコジラミの発見器が、ずっと安くできあがった。

 トコジラミ(別名:ナンキンムシ)を捕まえるDIY装置を開発したのは、ニュージャージー州ラトガース大学のナリンダパル・シン(Narinderpal Singh)氏、チャンルー・ワン(Changlu Wang)氏、リチャード・クーパー(Richard Cooper)氏のチームだ。殺虫するわけではなく、トコジラミの発生を、まだ駆除が簡単な初期の段階で警告する。

「早期発見のためのものだ。発見されたら、プロに連絡をすることができる」とシン氏は語る。

 トコジラミは、もう何千年も人間を悩ませている吸血性の寄生虫だ。先進諸国では、1940年代に殺虫剤によって大半が駆除されたが、復活してきており、かゆみのあるミミズ腫れに多くの人が悩まされている。

 たくさんの科学者たちが、トコジラミ対策の新しい方法を見つけるべく競っている。例えば、インゲンマメの葉にある突起が脚に突き刺さりトコジラミを捕らえることがわかっており、これを人工的に再現する試みが行われている。

◆大事なのは見つけること

 しかし、トコジラミは発見も難題だ。成虫は全長が5ミリほどで、活動が主に夜であり、昼間は隙間に隠れている。このため、数匹しかいない段階で目で見つけるのは非常に難しい。

「人の目に止まるころには、既にものすごい数になっている」とシン氏は言う。

 シン氏が新しく開発したトコジラミの罠は、IKEAで売っている犬の餌皿の表面に、黒色に染めた外科手術用テープを貼り、これをひっくり返しただけのものだ。トコジラミは黒色に引き寄せられ、また、垂直の面があるとよじ登る習性がある。登って餌皿の中に落ちたトコジラミは、なかなか外には出られない。

 有力な市販品「ClimbUp insect interceptor(クライムアップ捕虫器)」は、基本的な仕組みはシン氏の罠と同じだが、側面の高さが低い分、罠にかかったトコジラミを確保する効果は弱い。トコジラミが発生した実際のアパートの床と、実験用のトレイの中で、シン氏がこの2つを試したところ、犬用餌皿ではClimbUpの3倍のトコジラミが捕獲された。

◆トコジラミがあらがえない匂い

 シン氏の罠は、ノナナールと1-オクテン-3-オール(どちらも人間の体臭に含まれる物質)、スペアミント油、およびエジプトのコリアンダー油の混合物を餌に使うことでさらに効果がある。研究チームは以前の実験で、これら4種類の化学物質がトコジラミをよく引きつけることを発見していた。

 しかし、砂糖とイーストと水でも効果はある。イーストによって砂糖が発酵し、二酸化炭素が放出されるのだ。トコジラミは、眠っている宿主の人間を突き止めるのに、この二酸化炭素を利用している。このあらがいがたい気体が、トコジラミを罠のほうへと誘い出す。実験では、捕らえられるトコジラミの数が2倍以上に増えた。

 トコジラミを積極的に誘い出して監視する市販品は他に1つしかなく、価格が40~50ドルする。これに対し、シン氏が話すように、「われわれの設計は割安で、簡単で、便利だ。食料品店に行けば自作することができる」。

 今回の研究結果は「Journal of Economic Entomology」誌に8月1日付で報告された。

Image from Eye of Science/Science Source

文=Ed Yong

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