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N1分析の定義やメリットとは?一般的なリサーチ手法との違いも解説【ワークシート付】

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近年のマーケティングにおける考え方として、「ユーザー起点」というワードが浸透しはじめています。従来の、企業から消費者側への一方的なコミュニケーションで成り立つという考え方ではなく、ユーザーからプロダクトを選んでもらうための導線づくりを行う考え方です。

今、この「ユーザー起点」マーケティングを推進する手段として、通常のリサーチよりも深く顧客のインサイトを知ることができる「N1分析」が注目されています。

そこで当コラムでは、N1分析の概要から、通常のリサーチ手法との違い、導入に使われるフレームワークや事例について解説します。

N1分析とは?

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特定の顧客を一人だけ抽出し、その人の考え方や意見を徹底的に深堀りすることで、対象顧客を理解する、リサーチの手法です。

N1分析は、複数の大手企業でマーケターとして活躍された、西口一希氏によって提唱されました。実際に、西口氏はN1分析を駆使することによって、ニュースアプリ「スマートニュース」をアプリランキングNo.1へ押し上げた実績も持ち合わせています。

N1分析のNとは?

Nは対象の顧客数を指します。転じて、N1分析の「N1」は、一人にフォーカスした抽出データ(N=1)を指すこととなります。

N1分析のメリット・重要性は?

結論、顧客の購買行動を左右している、根本的な理由を探れることが挙げられます。

N1分析が他のマーケティング手法と異なる最大の特徴は、「一人の顧客を購買モデルとして徹底的に掘り下げること」にあります。

従来のマーケティングリサーチ手法はあくまで傾向値のみの把握であり、ともすると机上の空論にもなりがちでした。しかし「N1分析」であれば、実際に「プロダクトに興味を持ったきっかけ」や、立てた仮説に対しての正誤を、イチ顧客とのインタビューを通じて直接確認することができます。

結果、その後のプロダクト開発における重要なヒントを得られるだけでなく、リリース前の社内説明など、他者へプロダクト理解を求めるフェーズとなった際も、「N1分析」で得られた情報が説得力を持った根拠として効力を発揮します。

N1分析の前に必要な2つのフレームワーク

N1分析で掘り下げる「一人」は、決して無作為に選ぶわけではありません。なぜなら、顧客の属性によって、すべきアプローチは異なるからです。N1分析の属性は、以下で解説する2つのフレームワークによって分類されます。

ここからは西口一希氏の著書「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)」を参考にまとめています。

5セグマップ(顧客ピラミッド)

・5セグマップ(顧客ピラミッド)とは

市場の顧客層を、購買意欲の観点から「ロイヤル顧客」「一般顧客」「離反顧客」「認知・未購買顧客」「未認知顧客」の5分類にセグメントした図式です。ランク順で可視化されることから、著書内では「顧客ピラミッド」とも呼ばれています(下記は、それぞれの分類名称と、ランクイメージを図式化したものです。上から順に、プロダクトへの好意が高いことを示しています)。

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・5セグマップ作成のメリット例

5セグマップによって、下記情報を導くことができます。

  • おおよその投資対効果の算出
  • 顧客の心理分析の質の向上
  • 再現性、拡張性を兼ねそろえた売上成長戦略の立案

9セグマップ

・9セグマップとは?

5セグマップに、「ロイヤルティ(「次回も使用したいか否か」といった、継続購買の意向のこと)」のカテゴリを追加した分類方法です。未認知顧客以外のすべてのセグメントに、「(購入に)積極or消極」の分類が付随し、セグメントごとのロイヤルティを可視化します。

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振り番のマスが、顧客セグメントの分類です。振り番が小さい方から順に、プロダクトへの好意が高いことを示しています。

・9セグマップ作成のメリット例

5セグマップのメリットに加えて、下記のメリットも得られます。

  • 販促効果とブランディング効果の変化を統合的に可視化
  • 競合参入リスクの検知(競合視野に含めていなかったカテゴリ製品の把握など)

N1分析の実践

顧客を上記のフレームワーク内のセグメントに当てはめたら、今度はセグメントごとの行動傾向や認知状況の差分を分析します。さらに競合他社のプロダクトに対しても同様の作業を行い、差分から現状の課題について仮説を立てます。

ここまでの作業を終えたら、いよいよ仮説の裏付けとして、対象の「一人」を知る具体的な調査・分析(N1分析)のフェーズに移ります。

N1分析は、対象者へのインタビューで行われます。データの差分を生んでいるセグメント対象者をピックアップした後、その差分を生んでいる理由について深堀りをし、行動特性や心理状態を洗い出します。このインタビューからカスタマージャーニ―を作成することで、新たなプロダクトアイデアのタネにつなげることができます。

また、前項で見出した課題に対して、仮説で解決策を導けているようであれば、その仮説に対する印象を聞いてみるのも効果的です。

勘違いしてはいけない注意点

N=1はペルソナではない!

同じくマーケティング用語の中で、「ペルソナ」という概念が頻出します。どちらも、実際のターゲットとなりうる概念であり混同されやすいワードですが、両者の決定的な違いとして「実在の有無」があります。

ペルソナはあくまでも、仮説から想像される人物像です。リサーチした情報をもとに設定されますが、その人物像が本当に実在するか否かの判断はつきません。

一方で「N=1」は前述でセグメントした対象から、実在する一人をリサーチ対象として選出します。実在人物の購買プロセスを深堀りすることによって、リサーチ以降のマーケティング活動に、より根拠と具体性を持たせることができるのです。

最終的に全体有益となることを意識する

N1分析は「一人」にフォーカスする手法ですが、かといってその「一人」だけが満足すればよい、ということではありません。その人の行動心理が、同じセグメントに当てはまる他の人でも適用されるどうか、併せて調査が必要です。「一人」と「全体」、それぞれの分析を行き来することで、はじめて課題仮説に確証を持たせることができるのです。

顧客タイプごとにカスタマイズした施策を行う

5セグマップ・9セグマップともに、未認知顧客層をいきなりロイヤル顧客層へ押し上げることは困難です。行動傾向や認知状況の分析を行うと分かりますが、セグメントごとに購買行動を左右する要因は大きく異なり、打つべき施策も異なるからです。

各セグメントの割合を導き、どのセグメントが割合を占めているかの統計データや、競合のセグメント割合と比較することで、注力すべきセグメントを導き、N1分析を実施しましょう。

成功事例をご紹介

ここでは、同じく西口氏の著書「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング(MarkeZine BOOKS)」で紹介されている事例として、「スマートニュース」の概要を紹介します。

当事例において著者は、はじめに想定される顧客を9セグマップで分けたあと、家族から友人、友人の友人に至るまで、「スマートニュース」の認知、使用実感から、生活様式などのヒアリングを重ねたと述べています。スマートニュースのターゲットは性別・年齢層問わず幅広いため、「N=1」の対象者データを多く取ることに注力されています。

その後、得たデータをもとに、新たなアイデアを固めていき、プロダクトの新たなコンセプトや、広告表現などのアウトプットにつなげ、PDCAを回した結果、日米合算での月間使用者数は1000万人を超えることとなりました。

まとめ

  • N1分析とは、一人の顧客を徹底的に知るリサーチ手法である。
  • N1分析の意義・メリットは、顧客の行動心理を具現化することにある。
  • N1分析を進める前に、「プロダクト認知」「購買経験」「購買頻度」(+継続購買意欲)の観点で顧客のセグメントを行い、セグメントごとの行動傾向や認知状況の差分から課題仮説を導く。

総じて、「N1分析」はユーザーのインサイトに肉薄し、今まで知りえなかった顧客の新たな側面を知るうえで非常に有用な手法といえます。決してマーケティングに限らず、新たなプロモーションや広告コミュニケーションを考えるうえでも、「N1分析」の考え方が大いに役立つことは間違いないでしょう。

▼N1分析のワークシートは、以下バナーよりダウンロードいただけます。

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