68歳で起業した元学長、開発素材をJAXAが注目…今は78歳「死んだ後も世の中に役立たせたい」

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 湘南工科大の元学長で、神奈川県藤沢市在住の谷本敏夫さん(78)が開発した繊維強化セラミックスが宇宙航空研究開発機構( JAXAジャクサ )の目に留まり、宇宙輸送機の素材適用に向けた審査が続いている。先端材料研究の第一人者だった谷本さんが、開発に向けて起業したのは定年退職後の68歳。「論文の成果だけで終わらせたくなかった。開発した素材が活躍する姿を見届けるのが夢だ」と話している。(日下翔己)

開発した素材を手にする谷本さん
開発した素材を手にする谷本さん

 繊維強化セラミックスは、軽量で強度、耐熱性に優れた素材で、航空・宇宙分野の部品を中心に普及が進んでいる。谷本さんは、独自の製造法で低コスト化を実現。1平方メートルあたり約1000万円かかった生産費用を100万円に抑えることが可能になったという。

 この素材に注目したのがJAXAだった。宇宙輸送機の外壁やノズルの利用に期待できると、2021年に「革新的将来宇宙輸送プログラム」に認定。谷本さんと共同開発を進め、23年夏には、大気圏突入時の高温にも耐えられることが実証された。現在は、40年代を目標に開発が進む宇宙輸送機の素材適用に向け、審査を重ねている。

 谷本さんは、米国のコロンビア大の客員研究員を経て、1989~2014年に湘南工科大教授や学長を務めた。長年の研究で新しい技術や素材を開発してきたが、リスクを抱える企業がすぐに取り入れることはまれで、実用化には長い時間がかかる。「研究成果を体が動くうちに実用化させ、自分が死んだ後も世の中に役立たせたい」との思いが募り、起業を決意。定年退職をした14年3月の4か月後、藤沢市鵠沼海岸に「湘南先端材料研究所」を設立した。

 当初、オフィスにあるのは机と椅子のみで、素材の製造に必要な機械は自ら設計。研究一筋で経営のノウハウはなく、営業や商談などにも苦労した。

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