<フィギュアスケート:フィンランディア杯>◇初日◇9日◇フィンランド・バンター

 【バンター(フィンランド)=高田文太】高橋大輔(23=関大大学院)が537日ぶりの復帰戦で、自身4番目の高得点で首位発進した。右ひざの大けがを乗り越えて、昨年4月20日のジャパンオープン以来2季ぶりに試合出場。男子ショートプログラム(SP)は最後こそフィニッシュのポーズに失敗して土下座の体勢になったものの、3回転半ジャンプなどをすべて決めて83・23点と、2位に13・01点の大差をつけた。特に「演技表現(パフォーマンス)」の得点は、SP自身2度目の8点台。日本男子のエースが一回り大きくなって帰ってきた。

 ミスなく迎えた最後の決めポーズ。高橋は右足つま先が氷に突き刺さり、前のめりに転倒した。「こんなミスは初めて」と顔を左手で覆った。そのまま恐縮したように正座。日本人ファンが陣取るスタンドに向かって一礼した。「1年半お待たせしました」と、感謝の気持ちを込めた土下座のようだった。

 演技終了後、「恥ずかしかった。最後のスピンで止まりたい方と逆を向いてしまい焦った。ジャッジの人も笑っていた」と高橋は照れた。最後に転倒するのは競技人生初。それでもジャンプをすべて決めて、国際大会のSPでは自己4番目の高得点。「途中まで足が震えたし、緊張もしたけど大きなミスもなくできた」と手応えを感じた。

 故障前よりも表現力に磨きがかかっていた。この1年半の間にリハビリを兼ねて、不足していた柔軟性を身につけた。股(こ)関節など全身の可動域が広がり、複雑な動きもスムーズに演じられるようになった。この日も「演技表現」は8・00点で、総合点で世界歴代最高得点をたたき出した昨年2月の4大陸選手権に次ぐ、SPで自身2度目の8点台。「パフォーマンス(演技表現)は会場を一体化させるほど高い」と日本スケート連盟関係者。最後は会場を爆笑の渦に巻き込み、高橋は復帰戦で強烈な印象を残した。