このCDは、ムーンライダーズもYMOも聴いたことがないという老若男女にも、是非聴いてもらいたいと思う。一曲目でぶっ飛ぶ(?)人が必ずいるはずである。エンディングにふさわしい雰囲気を持った「砂丘」というこの曲を、冒頭から聴けるというのもなかなかオツなものである。
「アバンギャルドな感じは苦手」という人にも全曲お薦めできる。なぜなら、彼の曲はどの曲も、どんなにサウンドが変化しようともそうした変化に負けないだけの存在感を持ったメロディを持っているから。彼の真骨頂はメロディラインにあるのだ。「ちょっと昔のヨーロッパの映画音楽が好き」という人だったら、絶対に損することはないと断言できる。
不満がないわけではない。とくに、「砂丘」と同じムーンライダーズの1stに入っている〡?紡ぎ歌」が選から漏れたのは、後悔されなければならない。「大好きな曲」とかしぶち氏が言っていたこの曲は、彼の無国籍(=多国籍)サウンドの、「砂丘」とは異なる方向性を持った楽曲として見逃すわけにはいかないものなのである。
このCDとは直接関係ないが、彼のソロ作品の中で「リラのホテル」だけが特筆される傾向があることにも注意を促しておきたい。