最終戦はARTA NSXがポール・トゥ・ウィン! タイトルはPETRONAS TOM’S SC430の手に【SUPER GT 09】

2009.11.09 自動車ニュース 島村 元子

【SUPER GT 09】最終戦はARTA NSXがポール・トゥ・ウィン! タイトルはPETRONAS TOM’S SC430の手に

今シーズンのSUPER GTをポール・トゥ・フィニッシュという最高の形で締めくくったのは、No.8 ARTA NSX(R・ファーマン/伊沢拓也組)。今回限りでレース参戦に終止符を打つマシン、NSXの有終の美を飾る勝利でもあった。

2009年11月8日、栃木のツインリンクもてぎで行われたSUPER GT最終戦。安定した速さに加え、巧みな戦略を味方にGT500ではNo.8 NSXが今シーズン2勝目を達成。GT300はNo.81 ダイシン アドバン Ferrari(青木孝行/藤井誠暢組)が勝利した。両クラスともポール・トゥ・ウィン。もてぎに詰め掛けた約3万5000人の観客は熾烈な攻防戦を大いに堪能した。

■予選からガチンコ勝負

暖かな陽気に恵まれた土曜の予選。最終戦はこれまで搭載されていたハンディウェイトも取り外され、まさに“ガチンコ”勝負色たっぷり。そして、今回の予選はノックダウン方式。3回に分けたセッションで、その都度出走マシンがふるいにかけられるなか、No.8 ARTA NSXのファーマンが最速タイムをマークした。2番手にはわずか100分の1秒差でNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/A・ロッテラー組)が、さらにNo.6 ENEOS SC430(伊藤大輔/B・ビルドハイム組)が3位に続いた。これに対し、シリーズランキング暫定トップのNo.1 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/B・トレルイエ組)は5番手どまりだった。

GT300ではNo.81 ダイシン アドバン Ferrariの青木がポールポジションを獲得。2位以下を0.7秒以上引き離すという、堂々の走りっぷりだった。

■チャンピオン候補GT-R脱落

今回の最終戦の戦いは、GT500、300両クラスともシリーズチャンピオンを巡る争いでもあった。GT500でその権利があったのは、予選トップのNo.8 NSX、2番手のNo.36 SC430、No.1 GT-Rの3台。だが、このなかで断然優位だったNo.1 GT-Rに魔の手が忍び寄る。スタート直後からバトルを繰り返し、タイヤを酷使。他車との接触も災いしたか、ピットイン直前にタイヤをバーストさせた。ピット作業で時間を費やし大きく出遅れたNo.1 GT-Rは、完走するのが精一杯。タイトル獲得の夢は呆気なく消えた。

レースは、序盤の時点でNo.36 SC430のロッテラーがNo.8 NSXのファーマンを逆転し、首位を奪取。その後、早めのピットインを施行したが、No.8 NSXのファーマンはその間に猛プッシュ。コース上で見えない敵との差を一気に縮めてピットイン。結果、ルーティンワークを済ませてコースに復帰した時点で、No.8 NSXは僅差ながらもNo.36 SC430からリードを奪うことに成功した。

■NSX勢、最後のレースを盛り上げる

後半に入ると、トップNo.8 NSXの伊沢とNo.36 SC430の脇阪のバトルも小康状態となった。そこに訪れたのがセーフティカーラン。1台の車両から漏れたオイルで火災が発生したのだ。セーフティカーの導入で再スタートとなれば、ともに勝利を渇望するNo.8 NSXとNo.36 SC430とのバトルが再び激化するかに思われたのだが……。
No.8 NSXにとっての勝利は、マシンの引退レースに花を添えることができるだけでなく、タイトル獲得のために残された唯一の手段となる。一方のNo.36 SC430は、3位までに入ればタイトルを手中に収めることができる。そんな背景もあってか、トップ2台はそのまま自分たちのレースを消化し、チェッカーを迎えることにしたようだ。

残された表彰台の一角、3位は混戦模様。そのなかからNo.17 KEIHIN NSX(金石年弘/塚越広大組)がピット作業でタイヤ無交換を敢行しながらも、終盤になって次々とポジションアップ。最終ラップでは2位のNo.36 SC430をも逆転か!? というくらいの勢いを見せ観戦スタンドを沸かせたが、あと一歩及ばず。そのままチェッカーを受けた。

結果、今シーズンのシリーズタイトルを手にしたのは、No.36 SC430。2位にはNo.8 NSX、3位にNo.1 GT-Rの本山(チームメイトのトレルイエは1戦休戦のため4位)が続いた。

■GT300も熾烈なバトルを展開

一方のGT300クラス。トップを快走したのは、今シーズン速さを見せながらも決勝ではアンラッキーな面が目立ったNo.81 フェラーリだ。ただし、ポイントを積み重ねることができず、すでにタイトル争いの圏外。一方、No.81 フェラーリの後ろでは、ポイント争いをしている3台のバトルが激化。チェッカーを受ける順番次第でシリーズランキングも入れ替わるという状況下で、息詰まる戦いが繰り広げられた。

結果、No.81 フェラーリに次いで2位でチェッカーを受けたのはNo.7 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC(谷口信輝/折目遼組)。そして3位にNo.19 ウェッズスポーツIS350(織戸学/片岡龍也組)が続き、シリーズチャンピオンを獲得した。

■2010年のSUPER GTにさらなる期待

ハンディウェイトシステムの改定や、最終戦のノーウェイト方式の採用など、いくつかのルール変更を経て行われた、今シーズンのSUPER GT。順位そのものに反映させたウェイトを意識して計算高いレースをするのではなく、つねに全開の戦いで挑む戦略へとスライドすることになり、レースは盛り上がりをみせた。

2010年シーズンは3月20-21日、鈴鹿での開幕戦を皮切りに全8戦が予定されている。さらに特別戦としてフォーミュラ・ニッポンとの同時開催レースも計画されている。一方でマシンに目を向ければ、今年でNSXをSUPER GTから引退させるホンダが、来期どんなクルマを投入するのかも気になるところ。オフシーズンも新たな話題で盛り上がりそうである。

(文=島村元子/写真=オフィスワキタ KLM Photographics J)

(写真左から)GT500クラス2位のNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/A・ロッテラー)、優勝したNo.8 ARTA NSX(伊沢拓也/R・ファーマン)、そして3位のNo.17 KEIHIN NSX(塚越広大/金石年弘)。
(写真左から)GT500クラス2位のNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/A・ロッテラー)、優勝したNo.8 ARTA NSX(伊沢拓也/R・ファーマン)、そして3位のNo.17 KEIHIN NSX(塚越広大/金石年弘)。 拡大
決勝36周目のワンシーン。セーフティーカー導入後、No.8 ARTA NSXを先頭に再スタートが切られた。
決勝36周目のワンシーン。セーフティーカー導入後、No.8 ARTA NSXを先頭に再スタートが切られた。 拡大
GT500クラス2位でフィニッシュ。シリーズチャンピオンを決めたNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー組)
GT500クラス2位でフィニッシュ。シリーズチャンピオンを決めたNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー組) 拡大
優勝したNo.8 ARTA NSX(R・ファーマン/伊沢拓也組)。NSXの最後のレースで有終の美を飾った。
優勝したNo.8 ARTA NSX(R・ファーマン/伊沢拓也組)。NSXの最後のレースで有終の美を飾った。 拡大
GT500クラス、シリーズ・チャンピオン獲得を喜ぶNo.36 PETRONAS TOM'S SC430の脇阪寿一(写真上)とA・ロッテラー。
GT500クラス、シリーズ・チャンピオン獲得を喜ぶNo.36 PETRONAS TOM'S SC430の脇阪寿一(写真上)とA・ロッテラー。 拡大
GT300クラスのトップ争いを演じるNo.81 ダイシン アドバン Ferrari(青木孝行/藤井誠暢組)と、No.7 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7(谷口信輝/折目遼組)。
GT300クラスのトップ争いを演じるNo.81 ダイシン アドバン Ferrari(青木孝行/藤井誠暢組)と、No.7 M7 MUTIARA MOTORS雨宮SGC 7(谷口信輝/折目遼組)。
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No.19 ウェッズスポーツIS350(織戸学/片岡龍也組)は、GT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得した。
No.19 ウェッズスポーツIS350(織戸学/片岡龍也組)は、GT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得した。 拡大

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