スウェーデンを代表するトラッド系グループであるヴェーセンのウーロフ・ヨハンソンと、スコットランドのシェトランド諸島を拠点とするトラッド系グループであるフィドラーズ・ビドのカトリオーナ・マッケイが組んだアルバム。ウーロフのソロ名義のアルバム_I Lust Och Gl'd_中の曲での共演がきっかけで出来たということだが、期待に違わぬ素晴らしい作品だ。個人的にはロック/ポップスやクラシックまで含めて考えても2009年に買った新譜のベスト3に入れるぐらい気に入った作品で、この冬何度聴いているか知れない。
まず、冒頭からのヨハンソン系の曲3連発が格好良い。冒頭はマッケイのハープから始まるが、それが普段の彼女とは一味違い、ヨハンソンに刺激されたのか、かなり切れ味鋭くアグレッシヴで、ときに前衛音楽のようにすら聞こえる。このマッケイのスコティッシュ・ハープとヨハンソンのやはり切れ味鋭くアグレッシヴなニッケルハルパの丁々発止の渡り合いに、たった二人で演奏しているという事実などすっかり忘れてしまう。4曲目はマッケイの故郷の町の名がついたナンバーで、ここでは逆に通奏低音風のニッケルハルパから入って、やがてマッケイのいつもながらの美しいスコティッシュ・ハープが旋律を奏で始め、そのうちにニッケルハルパも旋律を奏し始めると、互いに複雑に絡みながら進んでいく。(ただ、これに関しては、ニッケルハルパの「野趣」と言ってもよいような癖のある音色よりも、彼女が同じく二人でのアルバムも出しているフィドラーズ・ビドの仲間クリス・スタウトのフィドルの方が一層美しい演奏になったかもしれないが…。)
ともかく、全編この調子で、パワー不足どころか強烈な推進力を持ち、美しさと(必ずしも美しいばかりでない)刺激的な格好良さ、伝統楽器の音色と鮮烈でスマートな現代的センスが高度に結びついた傑作アルバムだ。