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2009年3月26日(木)

『週刊とらP!』竹宮ゆゆこ先生を直撃! いろいろなことを聞いてみた・その1

文:電撃オンライン

 PSP用ソフト『とらドラ・ポータブル!』を特集していくページ『週刊とらP!』。連載4回目となる今回は、『とらドラ!』の原作者・竹宮ゆゆこ先生にインタビューを敢行した。

 原作小説は3月10日に、そしてTVアニメ『とらドラ!』も昨日最終回を迎え、いよいよゲームの発売まであと1カ月と少し。このインタビューでは、小説・TVアニメを終えたばかりの先生に、その心境などを伺っていく。また、4月2日に掲載予定のインタビューその2では、ゲームについてより深い質問をぶつけていく予定だ。では、さっそく竹宮先生のインタビューをご覧いただこう!

――今月10日に小説が、そしてついにTVアニメも終了を迎えました。現在の心境を聞かせていただけますか?

竹宮先生:まずは、小説を書き終えて最初に思ったことですが……スケジュールが結構ずっと厳しかったので、本当にちゃんと終わるとは思わなくて(笑)。とにかく間に合ってよかったって思いましたね。そんなこと言うと、編集さんに悪いんですけど(笑)。

――スケジュールが厳しかったということは、もしかしたら、4月以降になっていたかもしれなかったんですか?

竹宮先生:いえいえ、それはさすがになかったでしょうけどね。編集さんのドリームメモというのがあって、何月に何が出るとか、前もって1年分ぐらいつけてあるんですが、カムトゥルーしました。で、間に合って、書き終えて一息つくと、「書き足りない……」と。実は、1冊書き終わった後はいつもそう思うんです。最後まで書いて完結したら満ち足りて、そんなこと思わなくなるんじゃないかなって勝手に思っていたんですけど……やっぱりいつも通りでした。

――ちなみに、脱稿したのはいつごろだったんですか?

竹宮先生:本当に限界の、「こんな時まで書いてちゃいけないんですけど」って時まで書いていましたね(笑)。前作の『わたしたちの田村くん』の時は、もし原稿が上がらなくても私1人が破滅するだけですけど、今回の場合は……TVアニメは同時進行で動いているし、そのすぐ後にゲームも控えていて、一蓮托生なワケですから(笑)。

――原作が10巻で終了というのは、いつごろから目安を付けていましたか?

竹宮先生:4巻くらいの時に、編集さんから「全何巻になりそうですか」と言われまして。その時には9か10くらいですかねと話しました。ちょうどアニメ化のお話をいただいたころで、全体的な構成を考えなきゃいけないって時でしたね。

――タイトルから竜児と大河がああなると予想がついた人も多いと思いますが、ラストの部分の大まかな流れっていうのは、いつごろ決まったのでしょうか。

竹宮先生:そうですね……どういう表現をしようかってことは決めていなかったんですけど、本質的な部分――2人がああいう流れから結末を迎えることは、結構前から決めていたと思います。

――それは、2人が1度離れて……ってことですか?

竹宮先生:そうですね。最初は、大河がアメリカへ行くってアイデアもあったんです。

――アメリカですか!

竹宮先生:国内じゃ物理的に近すぎてダメなんじゃないかなーと、ぼんやり考えていたんですけど……。

――先にすみれ兄貴がアメリカに行っちゃいましたもんね。

竹宮先生:そういうこともあって、この形に落ち着きました。下手したら、『とらドラUSA!』が始まっていたかもしれません(笑)。

▲こちらは、10日に発売された『とらドラ10!』の表紙。ゲームを遊ぶ前に読んでも、遊んだ後に読んでももちろん楽しめますヨ。

――では次に、エピソード的に書いていて一番おもしろかったシーン、筆がノったシーンはどこでしょうか?

竹宮先生:そういう質問をいただいたら、3巻の“プールに皆が集まったところ”と言おうと考えていたんですが、最初から最後までテンション高く書けたのは、スピンオフ第2巻の春田の話ですかね。

――ゲームの開発陣も、“困った時の春田頼み”というくらい、ある意味で重宝していたと言っていましたね。

竹宮先生:そうなんですか(笑)。私の場合、単純に最初から短編と決まっていたせいもあって、短距離走的にテンションを保って書けましたね。ただ筆がノッた分だけ予定より長くなってしまって、当初(電撃文庫MAGAZINEの掲載が)1回予定だったんですが、2回分になってしまいました(笑)。

――逆に、苦労したところはどのあたりですか?

竹宮先生:それはもう、迷うことなく6巻! 最後まで書いてから、書き直してって言われたんですよ!(笑)

――どのような経緯で、そうなってしまったんですか?

竹宮先生:最初、北村の対立候補が出てくる予定だったんですよ。わりと目立つ新キャラ、みたいな。『とらドラ!』って、そんなに新キャラが続々登場する作品ではないんですけど、ちょっとイタイタしい感じの女の子を出そうと考えていたんですよね。新キャラ自体が微妙だったっせいもあるでしょうが、第1稿が上がった時点で編集さんと、ちょっとこれは厳しいな、っていう話をしたんです。その後、方向性は変えずに1回書き直したんですね。そのキャラもいる状態で。でも、第2稿でもやっぱり厳しいねってことで……。

――ちなみに、お話的にはどんな感じだったんでしょうか?

竹宮先生:その子が『兄貴の敵』だったんです。文学賞なんかも取っちゃうようないわゆる文芸少女で、優秀なのに、でも同じ学年にもっと優秀なすみれがいたせいでずっと鬱屈してたんですね。すみれが学校を去ることになって、選挙に乗じて挑んでくる、みたいな。それに対して北村がどうするかという話でした。でも、先ほど話したようなこともあって、北村が“兄貴の敵”とではなく、自分自身と向きあう話にしようと。……今でも忘れませんけど、とある場所のエクセルシオールカフェにいた時に編集さんから「ちょっといいですか?」って電話がかかってきたんですよ。ルンルンってパンなんか食べちゃってる時に、その話を切り出されまして……。

――おお、天国から地獄みたいな感じですね……。

竹宮先生:一気にパンを食べる気が失せちゃいましたからね(笑)。もちろん今にして思うと、書き直してよかったんですけど。その時は、「ああ、ホントにこういうこと言うんだぁ」って思いました。6巻以降は、常に「これは全部やめましょう」って言われるかも……って、ずっと念頭に置いて書いていましたね。何を言われても傷つかないぞ! って感じで(笑)。

――では次は、好きなキャラクターについて聞かせてください。

竹宮先生:好きなキャラクターは、以前からずっと亜美ちゃんです。ただ、いたるところで亜美ちゃんって言い続けていたんですけど、書き終わった今になって、みのりんという存在が浮上してきて(笑)。作品からちょっと距離を置いて「あいつらこの先どうなってくんだろう」って想像すると、みのりんの人生が一番大変なんだろうなぁって。ハードなことが一杯ありそうで、そのことを想像すると、にわかにみのりん株がグググっと(笑)。

▲竹宮先生的に、株が急上昇中のみのりん。ゲームではどんなストーリーに?

――亜美ちゃんも実乃梨も身を引いて、北村はすみれ先輩が好きで、っていう形で、この先彼らはどうなっていくと思いますか。

竹宮先生:普通にやっていくと思うんですけど。これから一番大変なんじゃないかなって話したみのりんですが、先々、一番成長する余地があるのも彼女なのかもしれないですね。亜美ちゃんは、これからたくさんの人に好かれるんだろうな~みたいな感じがします。

――北村は、どうなると思います? いつの間にか裸キャラになったりしていましたけど。

竹宮先生:う~ん、北村というキャラを書くにあたって、最初はとにかく、わかりやすいステキ男子として登場させたかったんです。かっこよく、優等生で、頭もよく、かつちょっとおもしろくて、みたいな。同性にも好かれてて本当にイイ奴で。

――電撃文庫MAGAZINEで、TVアニメの最後にメインキャストにインタビューしたようですが、その際に北村役の野島さんが、みんな成長したのに北村はむしろ退化したようなことをおっしゃっていたらしいですよ。他のキャストも同意されていたとか。

竹宮先生:退化したっぽく見えても仕方ないかもしれません。最初は超人的なキャラだよー、みたいな感じで出てきて、たぶん北村自身も「俺は優秀キャラだよー」みたいな自覚……思い上がりがあって、でもそれが人間関係の中で揉まれて、己の分を突きつけられるようなこととかあって、結局それなりの幼さが当たり前に残る等身大のKITAMURAとして世間に放り出されたというか。それって、1つの成長ですよね。今にして思えばって感じですけど(笑)。

――原作の執筆を進める裏で、ゲームに関する作業にも携わっていたと思うんですが、そちらはいかがでしたか?

竹宮先生:主に、シナリオを見たのですが……それがもう大変で大変で! コレは私が悪いんですけど、シナリオを全部プリントアウトして送ってもらっちゃったんですよ。それがもうすごい量でして……。データでいただくだけでよかったな~と後悔しました。

――確かに、以前制作陣にインタビューした時に、かなりのテキスト量だと聞きましたが……。

竹宮先生:今にして思うと、なんでそんなことが想像できなかったんだろうって思います(笑)。気軽にお願いしたんですが、届いてみたらダンボール1箱分くらいドーン! と。

――それは……お疲れ様でした。

竹宮先生:いえいえ。むしろ重いのが嬉しいテキスト量でした(笑)。本当にうれしかったです。で、そのできたてのシナリオをルートごとにわけて小脇に抱えては喫茶店とかに出かけて、読んで。刷り出したばっかりの紙ですから、また密度がしっかりありましてねえ……(笑)。紙の角もいやってほど立ってるんですよ。手を切りながら読ませてもらいました。

――ちなみに、チェックにはどれくらいの期間がかかったんでしょうか?

竹宮先生:そうですねえ……全部チェックするまで、だいたい3週間くらいはかかりましたね。

――繰り返しますが、お疲れ様でした。では、次回はもうちょっとゲームの踏み込んだところまで伺っていきたいと思います。次回もよろしくお願いいたします!

竹宮先生:お願いします!

▲竹宮先生のもとにドーン! と届いたテキストの量はこれくらい。『とらドラ!』の単行本と比べてみると、どれくらいの量なのかなんとな~くわかる……かも?



というワケで、竹宮先生の今の心境を伺っていった第1回のインタビュー。より原作について深く突っ込んだ話は、4月10日発売の『電撃文庫MAGAZINE』に掲載される予定なので、興味がある人はそちらもご覧いただきたい! 次回は「亜美ちゃんを幸せに」発言の真意や、竜児が記憶喪失になってしまったことについてなどの質問をぶつけていく予定なので、お楽しみに!

竹宮先生:なんか、ゆりちゃんのこんな顔見たくなかったって思いました(笑)。

えっ!? それってどういうことですかー!?(続く)

そんなインタビュー後編はこちらから!

(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
(C)2009 NBGI
※画像は開発中のものです。

データ

▼『とらドラ・ポータブル!』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:PSP
■ジャンル:AVG
■発売日:2009年4月30日
■価格:通常版 5,229円(税込)/超弩級プレミアムBOX 9,800円(税込)
 
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