湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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フォス:カプリッチョ

2009年03月11日 | アメリカ
○ピアティゴルスキー(Vc)作曲家(P)(RCA)

フォスが亡くなったとつい先ほど知った。2月冒頭のことだそうである。最近よく聴いていた作曲家・演奏家なだけにびっくりした。奇遇は終近くにかぎってよく現れるものである。この楽しい小品はチェロピースとしてよく演奏され、曲名に象徴されるとおり技巧的で簡単ではないという印象があるが、軽やかに、時にはジャズ風、時にはボロディン(グラズノフ)風といった背景を思わせるフレーズを織り交ぜながら、民族音楽のフォーマットをもって、牧歌的な情緒を振り撒きつつ春風のように過ぎ去ってゆく。アメリカだから民族音楽と言っても借り物である、しかしそこが我々のような異種民族にとっても入りやすく感じられるのだ。

フォスの作風は職人的で折衷性を感じさせるものだが聴く者に首を傾げさせない配慮が行き届いている。一方この人は同時代の作曲家の紹介者に留まらない演奏活動をもって著名だったのであり、ピアニストとしてはまさに50年代アメリカのドライなピアニズムを保ったような溌剌としたもので、どんな曲もさらっと弾きこなすような高い技量を感じさせる(一方ピアノという楽器の表現を突き詰めていく専業ピアニスト的な部分は少ない)。アンサンブルピアニストとしてさかんに活動していて、この演奏録音もその一つであろう。そしてここでも、作曲家だからということもあるだろうが、リズムを強く、しかし軽く感じさせるような残響の無い演奏ぶりで音楽を盛り立てていく。一方ピアティゴルスキーはというと、こちらは田園風景だの夜の酒場だのといった情緒的なものは持ち込まない。ここにはただクラシカルな表現による音楽だけがある。これはこれでいいのだろう。技巧が解れ音程がぶれている部分も僅かにあるがこの曲では仕方ないかもしれない。泰斗たるところを見せているといって過言ではないだろう。やはりグラズノフ風の楽想にて心象を与える。○。ご冥福を。。

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