FWは若いタレントぞろい…今季のJリーグ注目選手
サッカージャーナリスト 大住良之
サッカーJリーグの2011シーズンが5日開幕する。湘南、京都、そしてFC東京の3クラブがJ2に降格し、代わって柏、甲府、福岡の3クラブが昇格。12月3日の最終日まで約9カ月にわたって熱戦が行われる。今季、活躍が期待される注目選手たちにスポットを当ててみよう。
Jで主力にならなければ五輪で活躍できない
今シーズンの最大の楽しみは、若い選手たちが急激に成長し、Jリーグの顔となっていきそうなことだ。
6月には来年のロンドン五輪を目指した日本の戦い(アジア2次予選)が始まる。このロンドン五輪世代となるのは1989年以降の生まれの選手たち。予選を勝ち抜くだけでなく、五輪の本大会でも結果を残すには、ただJリーグで試合に出ているだけでは物足りない。
主力の大半がそれぞれのクラブで中心選手として活躍し、日本代表にも選ばれるようになっていないと、現在の五輪で上位に行くことはできないだろう。
すなわち、今季のうちにJリーグで何人主力としてチームで活躍できるかが、ロンドン五輪での日本の命運を握っているということになる。
FWはタレントが目白押し
「ロンドン世代」のFWで注目されるのは、名古屋の金崎夢生、新人の永井謙佑、G大阪の宇佐美貴史、鹿島の大迫勇也、そして横浜Mの小野裕二。
すでにU-22日本代表のエース格でもある永井は抜群のスピードを持ち、得点力もある。オーストラリア代表のケネディ、日本代表の玉田圭司、金崎といった名古屋の攻撃陣の一角に加わるのは簡単ではないが、ポテンシャルは非常に高い。
昨年大分から名古屋に移ってレギュラーとして活躍した金崎は、やや伸び悩みの感じもあるが、スケールの大きな突破とシュート力で、大いに期待したい選手だ。
まだ18歳であるG大阪の宇佐美の長所はドリブル突破と決定力。昨季、すでにリーグ戦に26試合出場し7得点を挙げているが、今季はさらに成長し、チームの攻撃のけん引役となることが期待される。
鹿児島城西高から鹿島に加入して3年目の大迫は線の細さが消え、持ち前のシュート力に磨きがかかってきた。09年は3得点、10年は4得点。今季はさらに得点を量産し、鹿島のエースになりそうな予感もする。
そして横浜Mの小野は、宇佐美と同じ18歳。170センチと決して大きくはないが、強い足腰を持ち、ペナルティーエリアに入っていくプレーには迫力がある。
山崎と東の攻撃力にも注目
FWではないが、攻撃的なプレーヤーとして活躍が期待される「ロンドン組」もいる。磐田のMF山崎亮平、大宮のMF東慶悟らだ。
山崎の持ち味は抜群のボールコントロール能力と、とらえどころのないドリブル。左右両サイドをこなし、山崎にボールが渡ると周囲の選手は安心してサポートに上がっていくことができる。他の選手にはない能力をもったプレーヤーで、注目される。
東はU-21日本代表で出場した昨年のアジア大会(中国・広州)でトップ下として活躍、素晴らしい運動量で前線のスペースに飛び出し、得点力も見せた。今季、ユース時代からプレーしてきた大分を離れ、大宮に移ったが、Jリーグのスターの1人になる可能性は十分ある。
ボランチの一番手は大宮の青木?
中盤のつなぎ役、あるいはボランチとしては、大宮のMF青木拓矢、浦和のMF山田直輝、そしてC大阪のMF山口螢らに注目したい。
青木はすでに大宮でも不可欠な選手になっており、守備の強さを誇る。浦和の山田直は、昨年2回にわたる骨折という不運に見舞われたが、そのケガさえなければ10年ワールドカップのメンバー入りしていてもおかしくなかったタレント。高い技術とともに驚異的なスタミナを誇り、守備と攻撃をつなぐ。ロンドン五輪に向け、ぜひともJリーグで輝きを取り戻してほしい選手だ。
山口は所属のC大阪で昨年までほとんど出番がなかった。しかしハードな守備を行いながら攻撃にも参加し、ペナルティーエリアまで入っていくという現代的なMFのセンスを持っている。Jリーグで経験を積み、それを「ロンドン」に生かしてほしい。
期待のDFは鈴木と丸橋
攻撃陣と比較すると、DFは若い選手が認められにくいポジションだ。U-22日本代表の関塚隆監督にとっても、頭の痛いポイントに違いない。そのなかで注目されるのは、新潟のセンターバック鈴木大輔、C大阪の左サイドバック丸橋祐介だ。
新潟の鈴木は昨年のアジア大会に出場、7試合で1失点という堅守の中心的存在となった。181センチとセンターバックとしてはそう大きくないが、頑強で、ボールを奪ってからの展開も安定している。
丸橋はすでに昨季からC大阪でレギュラーポジションを取り、その圧倒的な攻撃力で注目を集めた。C大阪ではFKやCKも任されており、左足から繰り出されるボールの正確さはJリーグでもトップクラスに入る。
韓国の「ロンドン組」
「ロンドン組」は日本人選手ばかりではない。Jリーグには五輪を目指す韓国選手のタレントもいる。C大阪の攻撃的MF金甫ギョン、新潟のFWチョ・ヨンチョル、そして大宮のDF金英権だ。
金甫ギョンは昨年のワールドカップ代表、ことしのアジアカップ代表にも選ばれた選手。昨季は期限付き移籍でJ2の大分でプレーしていたため、C大阪でのプレーは今季が初めてとなるが、現在マジョルカ(スペイン)で活躍している家長昭博の穴を十分埋めるのではないかと期待されている。スピードが持ち味のトップ下だ。
チョ・ヨンチョルは新潟で3シーズン目。昨年に韓国代表デビュー、サイドから攻撃を仕掛け、豪快なシュートを放つ。伸び盛りで、大化けする可能性もある。
そして金英権は、昨年はFC東京で左サイドバックあるいはセンターバックとしてプレー、左足のロングフィードはJ1でもトップクラスといわれる。この選手も昨年韓国代表にデビュー、ベテランの多い韓国代表センターバック陣のなかで注目の存在だ。
乾、伊藤の飛躍に期待
「ロンドン世代」ではないが、まだ十分若手で、今季のJリーグで大活躍が期待できる選手もいる。G大阪のFW平井将生、C大阪のMF乾貴士、清水のFW伊藤翔、そして甲府のFWハーフナー・マイクらだ。
23歳の平井はスピード、シュート力と総合力の高いストライカー。G大阪でレギュラーポジションを取り、得点を量産すれば、日本代表入りも十分可能だ。
22歳の乾は今年Jリーグでプレーする日本人選手では最も巧みなドリブル突破を見せる攻撃的MFの1人。ボールを持っていないときの動きが改善されれば、日本代表入りどころか、その中心選手となることも可能な才能だ。
清水の22歳、伊藤は、高校(中京大附属中京高)を出てすぐヨーロッパに渡り、フランスでプレー、昨年日本に戻ってきた。スピードと高い得点力をもち、今季最も注目される若手ストライカーと言える。
ハーフナーは日本国籍。194センチの長身を生かして昨年はJ2で得点王(20点)となった。J1で成長を示せるか。
ベテランにも…
若手を中心に注目選手を挙げてきたが、もちろん百戦錬磨のベテランの中にも今季に強い思いをかける選手たちがいる。代表格は清水のMF小野伸二と甲府のMF伊東輝悦だろう。
小野も昨年9月に31歳になった。FW岡崎慎司(ドイツのシュツットガルトへ)、MF本田拓也(鹿島へ)、MF藤本淳吾(名古屋へ)ら多くの主力がクラブを離れるなか、新チームの中心選手として並々ならぬ闘志を見せている。持ち前の天才的なパスに加え、自ら得点を決め、チーム全体をリードするプレーに期待したい。
1974年8月31日生まれ、36歳の伊東は、J1通算483試合の出場記録をもつ鉄人。清水から新天地甲府に移り、中盤のコントロールタワーとしてリードする。
若手とベテラン、あらゆる年代の選手が自分自身の限界にチャレンジし、今季のJリーグを盛り上げてほしい。