2011.08.01

史上最高値をうかがう円高は「人災」。復興増税を狙う財務省と日銀の日本的官僚制度が犯人だ

欧州危機や米国債問題は本質ではない
髙橋 洋一 プロフィール
急速な円高は最高値を突破する勢いだ 【PHOTO】 Bloomberg via Getty Images

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 先日、中部地方の経済人の方々と話をする機会があった。すべての人が言っていたのは円高問題だ。輸出企業やその関連企業の人ばかりだったので当然であろうが、もう一企業の立場からは限界になっているとのことであった。

 円高が話題になると、かならず円高にもメリットがあるという話になる。しかし、円高で一番被害を受けるのは、輸出市場という厳しい競争に晒されている日本のエクセレント企業や、その関連会社だ。そして、円高に対応するためにこれらの会社が海外移転することになれば、国内の雇用がますます危なくなる。この意味で、円高が全体として日本経済にマイナスである。

財務省の為替介入など元の木阿弥になるだけ

 円高になると、マスコミは野田佳彦財務相にコメントを求める。いつもコメントは決まったように「注視する」である。一度だけ介入したが、その時は震えたそうだ。しかし、そもそも円高に対して財務省の介入を効果があると考えるほうがおかしい。介入の効果はせいぜい2、3日、もったとしても数週間に過ぎない。結局、元の木阿弥になって、結果として介入した分、為替差損が発生して、国民負担が残るだけだ。

 たしかに、財務省に為替の介入権限はある。しかし、介入の効果があるかどうかは、為替制度と裏腹だ。かつての固定相場は、字義通り介入して相場を固定させるものなので、その意味で100%効果があった。もっとも国際金融の常識では、その分金融政策が制約を受ける。

変動相場制では相場を自由に任せるので、そもそも介入がないのが原則だ(その一方で、金融政策の自由度が高まる)。持続的に介入効果があればダーティー・フロート(汚い変動相場制)になってしまう。

 それでは、変動相場制では為替相場に何の影響も与えられないかというと、それは違うう。自由になった金融政策を使えばいい。原理は単純。円とドルでどちららが相対的に多いか少ないかだ。多いほうの通貨は希少価値がなく安く、少ない方の通貨は希少価値が出て高くなる。こうした考え方をマネタリー・アプローチといって、国際金融では常識になっている。

 この単純な原理でその程度、為替を説明できるのだろうか。2007年以降、リーマンショックで米国はドルを増やしたが、日本はほとんど増やしていない。

 その結果、猛烈な円高になった。単純な回帰分析をすると、日米のマネタリーベースの比によって。円ドルレートの9割方は説明できる。

円/ドル=67.5+41.5*日米マネタリーベース(億円/百万ドル)の比率・・・(*)

 複雑な動きをするとされる為替レートがこれほど単純に説明できるのはかなり衝撃的だ。

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