ホメオパシーだけでなく

ホメオパシーについての学術会議会長談話への賛同

日本助産師会のウェブサイトに8月26日、次のような文章が掲載されました。

ホメオパシーへの対応について」本日、報道関係者へ公表いたしました

これが当該文書へのpdfリンク
http://www.midwife.sakura.ne.jp/midwife.or.jp/pdf/homoeopathy/homoeopathy220826.pdf

本文より引用
ホメオパシー」への対応について
今般、日本学術会議金澤一郎会長は8月24日付けで「ホメオパシー」の治療効果は科学的に明確に否定されており医療従事者が治療に使用することは厳に慎むべき行為という談話を発表されました。日本助産師会はその内容に全面的に賛成します。

日本学術会議の会長談話を受け、日本助産師会助産業務へのホメオパシー使用を会員に対して行わないよう徹底する事を表明しました。

「ついに、ここまできた・・・」
これが私の感想ですが、「おい、どらねこ!おめーは何にもしてないだろ」なんて謂われても「仰るとおりです」と返すしかないぐらい以前からこの問題を憂慮し情報提供をされてきた方がいらっしゃいます。
ホメオパシーに問題意識を持ち、ネット上で情報提供してきた方達は、どうして問題意識を持ったのでしょうか?それは、なんら効力を有しない砂糖玉に効果があると信用してしまい、必要な医療を受ける機会を逸したことで、最悪命を落とす事例を知っていたからです。(記事は新しいモノだが、以前から指摘されていた)

朝日新聞の記事、代替療法ホメオパシー利用者、複数死亡例 通常医療拒む
http://www.asahi.com/health/news/TKY201008100476.html

事情を知っている方々は、科学的にもその作用機序が否定された、薬理効果も証明されていない砂糖玉を用いた代替療法が日本に広がってしまうことを危惧しておりました。
例えば此方のブログ の『let's skeptic』さんは早くからこのホメオパシーに問題を感じ、ホメオパシーQ&Aを作成し、その実態の周知に努めておりました。記事を読む前の私はホメオパシーって、なあに?ヒーリングの一種?みたいな認識でしたが、Q&A方式という事もあり、私でも要点を容易に理解することができました。このブログやニセ科学疑似科学に対して問題意識を持っている方の間ではホメオパシーの実態とその危険性に対する認識は共有されていたと思います。

このように、web上の一部ではホメオパシーは危険な代替療法であるという認識が形成されていたのですが一般への理解は大きく進む事無く、逆にホメオパシー団体の広告が新聞や雑誌、助産の専門誌にまで掲載されるなど、海外で行われている代替療法から、海外発の代替療法というぐらい、認知が進んできたように感じておりました。

■状況が動いた
一人の赤ちゃんが命を落とした事が切っ掛けに、このような状況が一変(と謂って良いでしょう)しました。

『読売新聞の九州版に「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴の記事が掲載された(7/9日)』
魚拓→http://megalodon.jp/2010-0709-0945-01/kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100709-OYS1T00214.htm
この記事を切っ掛けに、全国紙もこの件を採り上げるようになり、中でも朝日新聞助産師個人の問題ではなく、ホメオパシーそのモノが持つ構造的なものによるものではないか、と疑念を呈し、次々と良質な記事を掲載いたしました。中でも朝日新聞朝刊beの記事が転機になったように感じております。

2010年7月31日付 朝日新聞東京本社朝刊beに掲載
問われる真偽 ホメオパシー療法

そしてついに、日本学術会議会長がホメオパシーに対する談話を行うに至りました

ホメオパシー」についての日本学術会議会長談話の記者会見(1)
http://www.asahi.com/health/feature/homoeopathy_scj01.html

金澤 一郎会長は談話の中でホメオパシーをばっさりと斬りつけました。

切っ掛けとなった、ビタミンK欠乏による頭蓋内出血でお子様を失われたお母さんの提訴は、同じく助産院での助産師の不手際で命を落とした赤ちゃんを持つ琴子さんのお母さんの経験に勇気づけられ、この件が切っ掛けで様々な方からのアドバイスもあり、ここまで踏み切られた*1と私は理解しています。
『助産院は安全?』 

こんな悲しみは二度と繰り返してはならない、ブログ主さんや読者の抱く同じ気持ち*2が実を結び、冒頭に挙げた声明の中で、日本助産師会は下記のように述べるに至りました。

日本助産師会は、山口県で乳児がビタミンK欠乏性出血症により死亡した事例を受け、ホメオパシーのレメディはK2シロップに代わりうるものではないと警告し、全会員に対して、科学的な根拠に基づいた医療を実践するよう、8月10日に勧告を出しておりますが、一昨日出されました日本学術会議の談話を重く受けとめ、会員に対し、助産業務としてホメオパシーを使用しないよう徹底いたします。

まだまだ問題は決着したわけではありませんが、ここまでこれた事を素直に喜びたいと思います。


代替療法もう一つの懸念

周産期医療崩壊が危惧される現状でのとても素晴らしい表明だと思います。しかし、ツイッター上でその文言に一つの危惧を呈した方がいらっしゃいました。そして

助産業務への使用は戒める記述があるが、「妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導」の業務への使用を除外している』と指摘されました。

確かに、助産業務にはホメオパシーを使用しないとありますが、助産業務から外れる保健指導などへの言及はしていない形になっております。アナタ何を細かいことを・・・と、思われるかも知れませんが、ヒトというのは案外自分や自分たちの言葉に影響を受けるものなのです。そして、表現の中に『として』を入れているところが、何らかの意図を感じてしまいます。助産業務としてでは無ければ良いのね、という解釈の余地を残すものだからです。確かに、助産師の資格を持つ方が個人的にホメオパシーを実施することを制限するのはおかしな話ですが、わざわざ助産業務という言葉を使う必要はなく、もっと短く、『業務』にとすればよいからです。単なる杞憂であれば良いのですが、コレについては今後の助産師業界の動向を見守る他は無いでしょう。

ホメオパシーだけの問題じゃない
今回の件は、赤ちゃんの尊い命が犠牲になったことで、ホメオパシーの問題点が表面化いたしました。しかし、それ以前から問題点については同じように指摘されていたのです。指摘自体理路整然としており、妥当なモノです。これは、犠牲が起こらなくても我々は未然に防ぐことは可能であったと謂うことを意味していると私は思います。そして、危険な代替療法ホメオパシーだけじゃないのです。助産院では今でも『玄米菜食』など、根拠のない食事療法が母乳に良いと勧められたり、『マクロビオティックのおてあて法』などを地域への講習会などで広めたりしているのです。それらはホメオパシーと同じ構造を持っております。次の犠牲者が現れないと改善されないのでしょうか?
この機会に、それらの根拠無い代替療法も俎上にあげて、赤ちゃんが危険にさらされることの無いよう、助産師会に働きかけていく必要があると私は思いました。
問題に多くの方が興味を持ってくださる今のウチに・・・

■なんとか記事にしたいです
とらねこ日誌では近いうちに、マクロビや玄米菜食(正食)の考えに基づく、根拠のない代替(食事)療法などの問題点を掲げ、ホメオパシーと並べその類似点を指摘する記事をアップしたいと考えております。
その為には手持ちの情報ではやや不足しており、マクロビオティックの指導者や推進者等が、患者に対して○○がんに効く、難病が治る、予防接種は○○で有害である旨を述べている、書籍やwebサイト、掲示板での発言などを頂きたいと思います。また、どのような形式で訴えたら効果的だ、等のアドバイスも頂ければ嬉しいです。
細かい情報でもちょっとしたアドバイスでも結構です。

どうぞよろしくお願いします。

*1:素晴らしい勇気であると思います

*2:善意から生まれた同じ気持ちだから尊いとかいうのじゃなくて、それ以前に、前提の確からしさを追求し綿密に問題点を訴えていたブログ等があって、それが下敷きとなり問題点が確認され、追求されたというところが大きい。