野沢那智、そして坂本龍一

2010年10月31日(日) 18:09:53

昨日は盆栽教室に行ったので、そのことを書こうと思ったが、それは後回しにしてこのニュース。

野沢那智、死去。

今朝、しばらく新聞の前で固まった。あまりに突然で、あまりに衝撃。

TBSの深夜放送「パック・イン・ミュージック」の金曜日担当、野沢那智と白石冬美。通称「ナッチャコ・パック」。これはボクの青春だった。これと、かぜ耕士の「たむたむたいむ」、このふたつを軸に、オールナイト・ニッポンやセイヤングを聴いていた、あの青く長い夜たち。

ナッチャコ・パックについては何度も長い文章を書こうと思ったが、まだ書けていない。そのうち書けるかな…。

いろんなことが想起され、ちょっと呆然と午前中を過ごし、そのままツイッターをぼんやり見ていたら、神原弥奈子さん(@minako)のツイートで「あと、5分! (#skmtUST live at http://ustre.am/pFvi)」というのが流れてきた。

何だろうと見てみたら、坂本龍一北米ツアーのシアトル公演がUstreamで生中継されるという。彼はネットを使った実験的なライブをよくやるので、あまり不思議に思わず、普通に見始めた。

そしたら一曲目で耳を疑った。
なんだこの音質・・・!

クリアすぎる。美しすぎる。Ustと思えない…。
特にピアニシモ。本当にUst中継か? しかもフォルテシモになっても音が割れない……

調べたら、なんと古川享さん(元マイクロソフト会長:@SamFURUKAWA)と平野友康さん(デジタルステージ:@dsHirano)が有志として、ふたりで中継をやってくれているらしい。なんて豪華な中継陣!(そこに至る経緯はこちらにまとめられている。これまた実にソーシャルネットワーキング的なので是非読んでみてください)。

と、そこで思い出した。昨日だったか、古川さんと坂本龍一の対談をツイキャスで見たんだった。そうか、あの流れか。

で、ボクはこんなツイートをした。「坂本龍一シアトルライブのUst中継、音が異様に良い。LINEでつなげてる」

そしたら、シアトルの現場でまさに今Ust中継してくださっている古川亨さんからすぐリプライが届いた(こういうのもスゴイ!)。

SamFURUKAWA
12:40pm via Twitter for iPhone
繋がっているのは電線やデジタルデータではなく、信頼関係と愛です! RT @satonao310: 坂本龍一シアトルライブのUst中継、音が異様に良い。LINEでつなげてる。#skmtUST live at http://ustre.am/pFvi

ちょうどそのとき坂本龍一は3曲目の「美貌の青空」を弾いていた。
あまりの美しさに思わず落涙。恥ずかしながらちょっと嗚咽。野沢那智死去のニュースで弱っていた心を美しい曲に直撃され、古川さんのコメントが追い打ちをかけ…、なんかどうしようもなくなった。

そしてシェルタリングスカイ、戦場のメリークリスマス、チベタンダンス、アクア………(涙)

えらく涙もろかった午後(笑)
コンサート会場でリアルに聴いているのとはまた違う感覚。会場に向かって弾いている坂本龍一のピアノが直接、ボク個人に届いてくるような不思議なチカラがあった。これか。これがリアルタイムウェブのチカラの秘密か。

疲れ切った無為な休日に、部屋から一歩も動かずに、シアトルの坂本龍一をリアルタイムで聴けるシアワセ。それをUstで9000もの人たち(アンコールの「AQUA」では9000人に達した)と約2時間、リアルタイムで共有できるシアワセ。

そして、たぶんそれはそれだけで存在するのではなくて、たとえばあの世に行ってしまった無数の野沢那智のような人たちが積み重ねてきたいろんなものの上に屹立している。「ナッチャコ・パック」に泣いたり笑ったりした、あの長い夜と、たったいまが確かにつながっている。そんな感覚がたまらなかった。みんなが少しずつ世界をよくしようとしてきた。その端っこを自分が享受できている。

死と生が、過去と現在が、遠き地と近き地が、自然に一線につながったような感覚を持てた午後だった。野沢那智さん、坂本龍一さん、古川享さん、平野友康さん、どうもありがとうございました。



このUst配信、シアトルの会場から携帯回線(ポケットMiFi)を使っておこなわれたらしい。なのにあの音質か。ぬぬぬ。

※※
その後、ライブ会場から古川さんのシアトルの自宅にふたりで帰る様子を平野さんがツイキャス。ボクもそこで古川さんと平野さんに感謝を伝えることが出来た。古川さんから「さとなおさんもシアトルに来ればいいのに」とか言われたりして。シアトルで素晴らしい仕事(?)を終えたおふたりと東京のボクがリアルタイムでつながっている感じがなかなかに鳥肌もんだった。改めてすごい時代になってきたもんだ。

佐藤尚之(さとなお)

佐藤尚之

佐藤尚之(さとなお)

コミュニケーション・ディレクター

(株)ツナグ代表。(株)4th代表。
復興庁復興推進参与。一般社団法人「助けあいジャパン」代表理事。
大阪芸術大学客員教授。やってみなはれ佐治敬三賞審査員。
花火師。

1961年東京生まれ。1985年(株)電通入社。コピーライター、CMプランナー、ウェブ・ディレクターを経て、コミュニケーション・デザイナーとしてキャンペーン全体を構築する仕事に従事。2011年に独立し(株)ツナグ設立。

現在は広告コミュニケーションの仕事の他に、「さとなおオープンラボ」や「さとなおリレー塾」「4th(コミュニティ)」などを主宰。講演は年100本ペース。
「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」でのJIAAグランプリなど受賞多数。

本名での著書に「明日の広告」(アスキー新書)、「明日のコミュニケーション」(アスキー新書)、「明日のプランニング」(講談社現代新書)。最新刊は「ファンベース」(ちくま新書)。

“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(コスモの本、光文社文庫)、「胃袋で感じた沖縄」(コスモの本)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「さとなおの自腹で満足」(コスモの本)、「人生ピロピロ」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)、「ジバラン」(日経BP社)などの著書がある。

東京出身。東京大森在住。横浜(保土ケ谷)、苦楽園・夙川・芦屋などにも住む。
仕事・講演・執筆などのお問い合わせは、satonao310@gmail.com まで。

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